出田眼科病院勤務時代より私が
ライフワークとして取り組む
“難症例白内障手術/眼内
レンズ手術” について

白内障手術マシンの性能が向上し手術手技も洗練された現在、通常症例の白内障に限れば、術後の成績について術者間の差はほとんど出ないと言って差し支えないでしょう。
しかし、難症例の白内障ともなれば話しは違ってきます。
一般的に巷で難症例として術者が一番多く遭遇するのは、“チン小帯脆弱”や“チン小帯断裂”という状態を伴った白内障ではないかと思われます。
チン小帯と呼ばれる眼内で水晶体を支えて固定する役割を果たしている細い糸状の組織があるのですが、そいつが非常に脆く弱くなってしまっていたり、あるいは程度の差こそあれ既に切れてしまっていることがあるのです。
そうなるとどうなるのか? 当然、水晶体がグラグラになります。
グラグラになるとどうなるのか? 非常に困ります。
どう困るのかと申しますと、超音波乳化吸引術を用いる一般的な白内障手術に際しては

  1. 硬くなった水晶体内容を細かく砕いて吸い出し、
  2. 水晶体の一番外側の嚢(ふくろ)の部分は無傷なまま残し、
  3. 最後に眼内レンズをその嚢(ふくろ)に挿入し据え置く

という手順を踏むのですが、支えが弱くグラグラの水晶体に対しての①と②の操作は困難を極めることになります。
よしんば、そこを気合一発乗り切ることが出来て③の操作に進めたとしても、そんなグラグラな状態の嚢(ふくろ)入った眼内レンズは、時間が経つと嚢に入ったまま眼内で変な向きにずれてしまうことがあります。そればかりか、ヘタすると眼底に落っこちてしまうことさえあります。
ですから、そういった場合には眼内レンズを嚢に無理やり挿入しておくのではなく、眼球の壁の部分(強膜)に内側からしっかりと固定する特殊な手術が必要とされます。
このような水晶体がグラグラな状態での白内障手術、あるいは眼内レンズが既に眼底に落ちてしまった眼から古い眼内レンズを取り出して新しいレンズを眼内に固定する手術を、私は出田眼科病院やいでた平成眼科クリニック在職中は一手に引き受け、かなりの数を手がけてまいりました。また、眼内レンズを眼内に固定する際の最新の手術方法である“強膜内固定”という術式を、熊本で最も早く取り入れた術者のひとりでもあります。
チン小体脆弱のために白内障にグラグラ状態を伴っていたりあるいは過去の手術で挿入された眼内レンズがずれたり落っこちてしまったり、などと難症例化し通常の眼科クリニックでの対応が困難になった患者さんにこそ、大学病院に勝るとも劣らないレベルの手術治療を日帰り手術において私自身の手でしっかり責任を持ってお届けしたいと考えております。
また難症例白内障手術/眼内レンズ手術においては、手術機器などの装備面においても白内障手術マシンだけではなく硝子体手術用のマシンが必要になるなど、なにかと大掛かりになってはまいります。
ですが当院はもともと日帰り硝子体手術も行なう施設です。
何があっても大丈夫です。

“落屑症候群” をめぐる諸問題について

先ほど述べたチン小帯脆弱について、もう少し踏み込んでみたいと思います。
じつは九州地区は日本の他の地区よりもチン小帯脆弱を有する方の割合が断然多く、このことは眼科医の中では半ば公然の常識であったりします。
そしてそのことは、遺伝的素因をもとに環境的要因がかぶさり発症し進行するとされる“落屑症候群”と呼ばれる、白いホコリのような細かい物質(落屑物質)が眼内に徐々に蓄積し増え続けて行くなかなかに厄介な症候群が惹き起こしていることも、われわれ眼科医の中では周知の事実です。
ところでこの落屑症候群は、水晶体や眼内レンズのグラグラを惹き起こすばかりではなく、緑内障を惹き起こすことが少なくありません。なかなかに厄介な、と申し上げたのはそのためです。
そしてこの落屑症候群においてチン小体脆弱の程度が強い方は、必ずそうだと言い切れるわけではありませんが、私の経験では程度の重い緑内障を合併している場合が少なくないようです。
このことが何を意味するのかと言いますと、チン小体脆弱を抱えた患者さんへ白内障手術/眼内レンズ手術を施行する際には、必要に応じて緑内障手術も同時に施行することが望ましい場合があり得る、ということです。
実際、私は自らの見解に従い眼内レンズの固定手術と硝子体手術と緑内障手術をいっぺんにこなしてしまう総合格闘技ばりの手術を多く手掛けてまいりましたが、長期的視野に立ってその結果を評価した場合に患者さんの負担は大幅に軽減されることになり、自身の苦労が無駄にならなかったことを再認識する場面が多々ありました。
一方、同時手術に至らなかった場合にでも後年になって緑内障手術が必要になることはあり得ます。しかしこのときに問題となるのは、以前になされた手術のやり方次第ではその眼に新たに緑内障手術を施すことがもうほとんど不可能に近い状態になっていることもある、ということです。(実際に私はこれまでそのような難局に何度も遭遇し、そしてその都度半泣きになりながらも気合一発なんとかしのいでは来ましたが)
以上より、私は声を大にして申し上げたい。
「落屑症候群から水晶体や眼内レンズのグラグラに至った場合に際して本来は緑内障手術に精通した術者が治療にあたるべきである」と。
目の前の現実への適切な対応は当然必要とされるわけですが、将来的に必要になるかもしれない緑内障手術のことにまでを思いを遣ることが出来るかどうかで、その患者さんの将来は天と地ほどに変わって来ます。そこに求められるのはその場しのぎの小手先の技などではありません。イマジネーション以外のなにものでもないのです。

永田眼科
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院長
永田 智
診療内容
緑内障手術 網膜硝子体手術
難症例白内障/眼内レンズ手術
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